RACE REPORT レースレポート

2024 UCIアジアツアー2.2 TOUR OF JAPAN vol.1

2024.06.19

photo : 三井 至

 

レース概要

UCI(国際自転車競技連合)アジアツアーのスケジュールに組み込まれているステージレース TOUR OF JAPAN(ツアー・オブ・ジャパン)が、8日間に渡り開催された。チームとしてはコロナ禍の2021年に出場しており、今回が2回目の参加となる。

 

国内最大規模のステージレースであるTOUR OF JAPAN(以下TOJ)は、全ての国内UCIチームが目標とするレースであり、UCIランキングの上位チームから出場権が獲得できる。レバンテフジ静岡としても、今大会に出場できることは大変光栄である。

 

また、6日目には地元静岡県の小山町を舞台に開催れる富士山ステージが控えるため、レバンテは一人でも多くの選手を富士山ステージで揃え、存在感のある走りで上位リザルトを目指したい。更に、先に開催されたTOUR DE KUMANO同様、1点でも多くのUCIポイントを獲得するために、各ステージと総合時間賞の上位リザルトをチーム目標とする。

 

UCI2.2クラスのポイント配点

ステージレースとなる2.2クラスは、各ステージの上位3名と、全ステージのゴールタイムを合算した総合時間の上位10名に以下のUCIポイントが付与される。各チームの所属選手のUCIポイント累計が、今後のUCIレースの招待を得る基準となるため、数少ないチャンスで結果を残してゆく事が重要である。

 

各ステージ

1位 7点

2位 3点

3位 1点

 

最終順位(総合時間)

1位 40点

2位 30点

3位 25点

4位 20点

5位 15点

6位 10点

7位 5点

8位 3点

9位 3点

10位 3点

 

【出場選手】

床井 亮太

グルド ダニエル

高梨 万里王

山口 瑛志

夏目 天斗

サウル エヴァー

 

【出走人数】

95人(16チーム)

 

 

【第1ステージ 堺】

2024年5月19日(日)
大仙公園周回コース
2.6km(個人タイムトライアル)
LIVE動画:https://www.youtube.com/live/XgvFQ3ogZaU?si=bcSw1jAsoG510jyT

 

ステージレースは、毎日完走しなければ翌日の出走が許されない厳しいレースでもある。そんな中でも日々のリザルトと、総合成績上位を目指して、チーム一丸となりチャレンジしなければいけない。

 

高梨以外はTOJ初参戦のメンバーで構成されるレバンテフジ静岡、8日間に及ぶステージレースも全選手が初めての経験である。未知のレースではあるが、今回もUCI2.2クラスのレースという事で、ステージ3位と、総合トップ10(UCIポイントの獲得)を目標に据えレースに挑んだ。

 

 

第1ステージは大阪堺市で行なわれる市街地の個人タイムトライアルだ。
大仙公園の周りを四角く回る1周2.6kmのコース。1人ずつ時間差でスタートするため、これから8日間を戦い抜く選手の顔見せ的な意味合いが強いが、一発の高出力とコーナーリング技術がタイムを左右するためパワー系の選手にとっては脚の見せどころである。

 

 

チームとしては、タイムトライアルを得意とする夏目や、パンチャーの床井、エヴァーに期待したい。

 

今後のステージも考えて、無理をせず慎重な走りに徹する選手が多い中、堺を地元とするシマノレーシングの選手が好タイムを連発、上位に名を連ねる。そんな中、圧倒的なスピードで駆け抜けたのはアスタナ カザクスタン ディベロップメント チームのマックス・ウォーカー選手。11番手ででスタートを切ると、3分8秒73で2.6kmを駆け抜け、後発の84名がタイムを更新する事は無かった。結果、2位に7秒以上の差をつけて第1ステージの勝利を手にした。

 

 

チーム最上位は、雨とコーナーリングを苦手とする山口の22位。慎重に攻めたと話す山口であるが、予想以上の好タイムで走る事ができたようだ。

明日から、いよいよ本格的なステージレース(ロードレース)がスタートする。
選手は宿発地の京都市内に到着後、マッサージで身体をケアしながら翌日の京都ステージに備える。

 

第1ステージ リザルト

1位 マックス ウォーカー(アスタナ カザクスタン ディベロップメント チーム)
2位 寺田 吉騎(シマノレーシング)
3位 マッテオ マルチェッリ(JCL TEAM UKYO)

26位 山口 瑛志
34位 床井 亮太
44位 夏目 天斗
57位 高梨 万里王
60位 サウル エヴァー
88位 グルド ダニエル

 

【第2ステージ 京都】

2024年5月20日(月)
普賢寺ふれあいの駅→けいはんなプラザ周回コース
パレード 6.6km
レース 103.6km(2.8km+16.8km×6周)
LIVE動画:https://www.youtube.com/live/TedClIL36Fo?si=CgiNqxg6Cq_ow_b6

 

 

2日目の京都ステージは、4~5kmの登坂区間とテクニカルなワインディングの下りをこなし、道幅の狭いアップダウン区間を経て平坦基調でゴールに戻る。この変化に富んだ1周16.8kmのコースを6周回する。

 

長めの登り区間があるものの勾配は4-5%程度と緩いため、パンチャー系の選手や、体力を残すことができればスプリンターにも有利なコースと予想される。道幅の狭い区間も多く、アタックからの逃げ切り勝負も可能性があることから、アタックのタイミングを逃さず、パンチャーの床井、ダニエルでの上位リザルトをステージ目標とした。また、TOJは富士山や信州飯田といった登りのステージが総合成績に大きく影響するため、登りを得意とする山口のタイムロスを最小限に抑え、アップダウンが激しくなる後半のステージに繋げる事を全選手が意識してスタートした。

 

スタート直後から逃げを試みる選手のアタックが頻発し、ライアン選手(キナンレーシングチーム)が単独で抜け出すと約1周を1人で逃げる。更に、武山選手(宇都宮ブリッツェン)、中井選手(シマノレーシング)、ティマチャイ選手(ルージャイ インシュアランス)の3名が追走を開始しライアン選手と合流。レース序盤に4名の逃げグループが形成され、この4名は終盤まで逃げ続けることになる。

 

 

メイン集団の先頭でペースをコントロールするのは、総合力の高いアスタナ カザクスタン ディベロップメント チーム。逃げ集団とメイン集団との差は1分半程度を保ったままレースを消化していく。

 

レース終盤、協調体制を保ったままローテーションを続ける先頭4人に対し、メイン集団はJCL TEAM UKYOがペースコントロールに加わり本格的な追走を開始する。メイン集団のペースが徐々に上がる5周回目の登りで集団後方の選手が苦しくなり、登りを苦手とする夏目選手もここで遅れ始めた。

 

 

最終6周回目に入るとメイン集団は更にペースを上げ、登り区間で逃げ集団をキャッチ、このペースアップでダニエルと高梨、そして4月のレースで負傷した腰が完治していないエヴァーもメイン集団から遅れてしまう。

 

メイン集団は約50人に数を減らしゴールスプリントへ、ゴール手前1.5kmで発生した落車の影響を受け、床井、山口の2名は集団後方でゴールを迎えた。

優勝は、終盤にメイン集団をコントロールしたJCL TEAM UKYOのマッテオ・マルチェッリ選手、チーム最上位は39位の山口であった。

 

最後は落車による影響を受け上位のスプリント争いに参加する事はできなかったが、メイン集団でゴールした床井と山口は最小限のタイム差に留め、翌日の第3ステージ(いなべ)に臨む。遅れてしまったダニエル、高梨、夏目、エヴァーも、2人のアシストを行ないながらステージ上位リザルトを視野に入れ、残りのステージを戦いぬきたい。

 

第2ステージ リザルト

1位 マッテオ マルチェッリ(JCL TEAM UKYO)
2位 マックス ウォーカー(アスタナ カザクスタン ディベロップメント チーム)
3位 今村 駿介(日本ナショナルチーム)

39位 山口 瑛志
45位 床井 亮太
69位 高梨 万里王
75位 グルド ダニエル
79位 サウル エヴァー
80位 夏目 天斗

 

総合リザルト

1位 マックス ウォーカー(アスタナ カザクスタン ディベロップメント チーム)
2位 マッテオ マルチェッリ(JCL TEAM UKYO) +0’04”
3位 ライアン カバナ(キナンレーシングチーム) +0’10”

22位 山口 瑛志 +0’21”
28位 床井 亮太 +0’23”
62位 高梨 万里王 +5’42”
77位 グルド ダニエル +9’28”
79位 サウル エヴァー +10’07”
80位 夏目 天斗 +10’10”

 

U23総合リザルト

1位 寺田 吉騎(シマノレーシング)

3位 山口 瑛志 +0’17”

 

【第3ステージ いなべ】

2024年5月21日(火)
阿下喜駅前→いなべ市梅林公園周回コース
パレード 3.1km
レース 103.6km(8.6km+14.8km×8周)
LIVE動画:https://www.youtube.com/live/HPzxsGqkSRw?si=4hGHajjAgdLkDbeJ

 

TOUR OF JAPAN(TOJ)3日目のいなべステージ、チームにとっては今大会8日間の中で最も重要なステージと言っても過言ではない。

今回のTOJの目標は、1ポイントでも多くのUCIポイントを獲得することである。これを実現するためには、各ステージ3位以内、最終日の総合成績で10位以内を目指さすことになるが、どちらもとても高い目標であることは間違いない。目下、登坂力のある山口の総合10位がチームが目指すひとつめの大きな目標である。そのためには、本格的な登りステージが始まる第5ステージ(信州飯田)までに、できる限りタイムロスなく前半の4ステージをこなし、ツアー後半の総合争いに残りたい。今日のコースは途中に激坂区間や高速ダウンヒル区間が設定され、メリハリのあるレイアウトであるため集団の分裂が予想される。山口は総合系の選手から大きく遅れることの無いようにステージを終え、場合によっては逃げに乗りアドバンテージを稼ぐことにもチャレンジしたい。

 

 

今日のコースは、全体的に平坦が多いレイアウトながら、ゴール地点のいなべ市梅林公園には約2.5kmの登り区間があり、登りの後半1kmは勾配10%を越える激坂区間が設定されている。登りに強い山口ではあるが、短かく勾配のきついパンチャー系の登りは苦手意識があるため、チーム全体で山口の集団内ポジションをフォローしつつ、短い上りを得意とする床井のステージリザルトを意識してレースに臨んだ。

 

やはり今日もスタート直後からエスケープ(逃げ)を試みる選手がアタックを繰り返す。

床井と山口は、集団前方のポジションを確保しようとするが、道幅の狭い激坂区間と、その後の高速ダウンヒルに苦戦しポジションキープがままならない。アップダウンと繰り返されるアタックで集団のペースは落ち着かず、いくつかの集団に分断されては合流を繰り返すため集団後方はインターバルが激しく著しく体力を消耗する。

 

2周目に入ると登り区間で遅れる選手が多くなる。登りを苦手とする夏目と、群馬での落車による腰痛が改善しないエヴァーもここで遅れてしまう。

 

集団は分断と吸収を繰り返し、レースが大きく動いたのは4周目、JCL TEAM UKYO、トレンガヌサイクリングチーム、ルージャイ インシュアランス、チームブリッジレーン、キナンレーシングチームの選手たちによる6人の逃げが決まり、集団に1分ほどの差をつけて先行する。そして、この動きが勝ち逃げとなり、最後まで逃げ切ることになる。

前半に繰り返されたインターバルで体力を消耗したレバンテの選手は、ポジションを確保するのが精いっぱいで逃げに乗ることはできなかった。勝負所で明らかに力差を感じたレースだった。

 

総合リーダーを有し逃げに選手を送り込んでいないアスタナ カザクスタンがメイン集団をコントロールするも、逃げの6名との差を積めることができずレースは終盤を迎える。そして、山口はこの細かなインターバルと、下りのテクニカルなコーナーを攻略できず、第3集団へとポジションを落としてしまう。

 

中盤から逃げ続けた6名は、人数を削り4名でのゴールスプリントを迎えた。最後はカルボーニ選手(JCL TEAM UKYO)が圧倒的な力で4名のスプリントをねじ伏せゴールラインを駆け抜けた。

チームは、メイン集団(第2集団)でゴールした床井がチーム最上位の36位、山口は第3集団で約5分のタイムロスを喫してしまった。本格的な山岳ステージに入る前に総合が難しくなった山口であるが、床井と共にステージ入賞を目指し明日からのレースに臨む。

第3ステージ リザルト

1位 ジョヴァンニ カルボーニ(JCL TEAM UKYO)
2位 アナトリー ブディアク(トレンガヌサイクリングチーム)
3位 カーター ベトルス(ルージャイ インシュアランス)

36位 床井 亮太
40位 山口 瑛志
55位 グルド ダニエル
75位 高梨 万里王
DNF サウル エヴァー
DNF 夏目 天斗

 

総合リザルト

1位 ジョヴァンニ カルボーニ(JCL TEAM UKYO)
2位 アナトリー ブディアク(トレンガヌサイクリングチーム) +0’14”
3位 カーター ベトルス(ルージャイ インシュアランス) +0’17”

33位 床井 亮太 +2’07”
38位 山口 瑛志 +5’41”
67位 高梨 万里王 +19’32”
77位 グルド ダニエル +22’47”

 

【第4ステージ 美濃】

2024年5月22日(水)
旧今井家住宅前→横越→美濃和紙の里会館前周回コース
パレード 4.0km
レース 137.3km(11.3km+21.0km×6周)
LIVE動画:https://www.youtube.com/live/EV3E_sB9MJk?si=NeGkqVlAQye8I_yJ

 

 

TOUR OF JAPAN(TOJ)4日目、美濃は1周が21kmと比較的長く、2km程の登りはあるが勾配は緩やかでコース幅も広いため大集団で進むことが予想された。

8日間のステージレースも中盤に差し掛かり、選手によっては疲労が見え始めているため、翌日からの登りステージに備え体力の消耗を抑えつつも、大きな動きがあれば臨機応変に対応できるよう意識してレースに臨んだ。

 

今日はスプリンターや平坦系のパンチャーの日になると想定していたが、やはりスタートから逃げを試みる選手のアタックが繰り返される。1周目、単独もしくは複数名のアタックが集団から抜け出すも決定的な逃げにはならない。序盤、レバンテはダニエルが集団前方で展開を見ながらレースを進める。

 

 

2周目に入るタイミングで設けられたスプリントポイントを皮切りにレースが動く。スピードが上がったスプリントポイントを寺田選手(シマノレーシング)がトップで通過すると、同チームの中井選手を含む4名がカウンターアタック決め逃げを成功させた。

 

2周目以降、最終周回まで逃げ続けたメンバーは、山岳賞リーダーの中井選手(シマノレーシング)、モハマド選手(トレンガヌサイクリングチーム)、ジョシュア選手(セント パイラン)、山本選手(日本ナショナルチーム)の4名。総合時間では中井選手の1’48″が最上位であるが、この4名の逃げは容認され、総合時間賞リーダーのカルボーニ選手を有するJCL TEAM UKYOが集団を牽引する。

 

 

5周目、登り頂上に設定された山岳賞ポイントをトップ通過した中井選手が、目的を果たし先頭集団を離れる。

 

最終周、ここまで協力してきた3名の先頭集団からモハマド選手が遅れ先頭は2名に。不利に思われた先頭2名は、ゴールスプリントに向けて追いかける集団とのタイム差をさらに広げ、逃げ切りを狙う。そして脅威の粘りを見せた2名が逃げ切り、ジョシュア選手が先頭でゴールを切った。

 

メイン集団は70名ほどのゴールスプリントになだれこみ、窪木選手(日本ナショナルチーム)が先頭通過、日本ナショナルチームは表彰台の2位と3位を獲得した。

チーム最上位は、床井の32位であった。

 

明日からはアップダウンの厳しい山岳系ステージが始まる。

総合時間順位は5分以上の差が開いている山口であるが少しでも巻き返しを図り、床井も積極的なレースで上位リザルトを目指したい。

 

第4ステージ リザルト

1位 ジョシュア ラドマン(セントパイラン)
2位  山本 哲央(日本ナショナルチーム)
3位 窪木 一茂(日本ナショナルチーム)

36位 床井 亮太
59位 グルド ダニエル
63位 高梨 万里王

71位 山口 瑛志

 

総合リザルト

1位 ジョヴァンニ カルボーニ(JCL TEAM UKYO)
2位 アナトリー ブディアク(トレンガヌサイクリングチーム) +0’15”
3位 カーター ベトルス(ルージャイ インシュアランス) +0’18”

32位 床井 亮太 +2’08”
39位 山口 瑛志 +5’51”
67位 高梨 万里王 +19’42”
74位 グルド ダニエル +22’53”